日本のパスポートは世界最強なのに、所持率は4人に1人という現実。なぜ日本人はパスポートを必要としないの?
目次
日本人のパスポート所持率
外務省領事局旅券課の統計によると、平成30年末の有効旅券数は29,981,776冊で、平成30年末の人口が1億2642万人なので、パスポート所持率は23.7%になります。
一般旅券の年代・性別発行数を見ると、年代別では30歳未満の割合が43.1%を占めており、男女別では女性が52.9%となっています。
特に20代においては、女性が57.5%を占めており、女性の割合が大きいのが特徴的です。
下記に、各年代別・男女別の円グラフを作ってみました。
主要各国の海外への出国者数・出国率
日本政府観光局(JNTO)によると、2018年の日本人出国者数は1895万4000人だということなので、有効旅券冊数の63%ほどの方が利用しているという計算になります。
日本人口から考えると、2018年には約15%の人が出国していることになります。
これだと多いのか少ないのかわからないので、他の国の動向も調べてみました。
少し古くなりますが、(社)日本旅行業協会のデータの中に、2014年度の主要各国の出国者数・出国率・入国者数のデータがありました。
これを見ると、日本は中国・タイ・米国に次ぐ低さとなっています。
先進国の中では、アメリカと日本が極端に低い数字になっています。
出国者数には商用も含んでいるので、隣接国が多かったり陸続きのヨーロッパは軒並み高くなっており、特にオランダ・ドイツ・英国は90%以上の出国率になっています。
また、アジアの中では、ビジネスの面でも東南アジアを統括している会社が多いシンガポールは、出国率162%と格段に高くなっています。
アメリカの場合は、商用に関して言うと、広いアメリカ国内だけでビジネスが成り立っていることが多いため、海外に目を向ける必要性を感じない企業も多いのではないでしょうか?
また、観光に関しても、国自体が非常に大きいため国内だけで事足りるし、特に海外に行く必要性を感じない人が多いのではないでしょうか?
現実に、国内だけで時差がいくつもある大きな国ですからね…
周りを海に囲まれた小さな島国であり、ビジネス面でも国外に目を向けざるを得ない国でもかかわらず、他の先進国に比べて日本人の出国率が低いのは少し意外でした。
他の国のパスポート保有率
ところで、他の国のパスポート保有率はどうなっているのでしょう?
Forbesの記事によると、アメリカのパスポート保有率は2017年度で42%となっていますが、1989年にはたったの3%だったということです。
約30年間に40%近くパスポート保有率が増えており、伸び率はすごいですね…
また、カナダのパスポート保有率は2016年で66%、イギリス(イングランドとウェールズのみ)は2016年で76%となっており、いずれも日本よりも割合がかなり高くなっています。
日本の場合、出国率も低いですが、同様に保有率も他の先進国に比べてかなり低くなっています。
では、なぜ日本人のパスポート保有率がこんなに低いのか、なぜ海外に出ようとしないのか、自分なりに考えてみました。
お金の余裕がないという理由
まず、単純にお金の余裕がないという理由が挙げられます。
日本は、この30年ほど物価がほとんど上がっていないような気がします。
例えば、東京のワンルームの賃料なども、30年ほど前と比べてもそこまで値上がりしていません。
場所によっては、以前よりも賃料が下がっているのでは?と感じる場所もあります。
不動産の価格自体は、バブル後も順調に右肩上がりで伸びているのですが、賃料は不動産価格の伸びには比例していません。
基準消費者物価指数によると、2017年1月の賃料を100とした場合、30年前の1987年1月の賃料は85.8だそうです。
食パンの値段を調べたら、2017年1月の値段を100とした場合、30年前の1987年1月の食パン価格は83.4だそうです。
1987年の民間平均年収は約384万円、30年後の2017年の民間平均年収は約432万円となり、2017年を100とすると1987年は89になります。
30年間で給料は12%ほどしか値上がりしていないのに対して、物価は17%~20%ほど値上がりしており、物価上昇に給料が追いついていません。
物価の伸びも対して大きいわけではありませんが、給料はそれよりも伸びが鈍いので、当然利用できるお金には余裕がありません。
上記の表にもあるように、パスポート保有率の割合が高いのは30歳未満の若者になります。
一番外国に行きたいと思っている若者は当然給料も安いですし、「使えるお金の余裕がない」という理由もたしかに当てはまります。
それよりも、給料も上がり余裕が出てくる30代以降の割合が低くなるということは、日本全体の労働環境や給与などの問題が深く影響を与えていると思います。
テロなどの影響や治安が悪いというイメージ
次に、テロなどの影響や治安などを考えると、海外に行くのに勇気がいるという理由です。
最近はテレビだけではなく、ネットやスマホなどのニュースやツイッターなどのSNSなどから、世界中で起きる強盗や殺人・誘拐などの情報が簡単に手に入ります。
特に、アメリカでの9.11をテレビやネットのライブ配信で見た方も多く、その後に起きたパリやロンドン・スペインなどヨーロッパでのテロの情報などから、「海外=テロの可能性=治安が悪い」というイメージが頭から離れない方も多いです。
それだったら、「日本でもまだ行ったことない場所も多いし、日本国内を旅行した方が良いんじゃないの?」と思う方がいても不思議ではないかと…
ですが、日本国内でもテロが起きるという可能性はゼロでもありませんし、大雨や地震などの自然災害で毎年多くの人が亡くなっています。
世界中どこを探しても、「この場所は絶対に安心だ!」と言う場所を探すのは、なかなか難しいのではないのでしょうか?
特に若い年代には、今まで全く知らなかったことを経験することは、非常に大事なことなのではないでしょうか?
言葉が通じないので行きたくないという理由
海外に行く方で一番気になっていることは、やはり言葉の問題だと思います。
少子化が原因ということもあるのでしょうが、2004年をピークに日本人の海外留学者数は減少していると言われています。
少子化の他にも理由としては色々ありますが、上記にも述べた「資金的な問題」「安全性」の他にも、「内向き志向の若者の増加」や「留学が就職には有利にならない事」「国内で入学出来る大学も多く留学の必要性を感じない事」なども理由に挙げられています。
また、「無理に留学しても言葉の問題でかなり苦労する。」というようなネガティブな情報も、ネット上から簡単に目に飛び込んできます。
この「言葉の問題」は、インターネットが発達する以前からあったはずです。
ですが、以前は目にするネガティブ情報が少なかったため、「言葉が通じないことへの恐怖心」よりも「外の世界に出る冒険心」の方が勝っていたのではないでしょうか?
旅行に関しても、「わざわざ言葉の通じない国に行く必要はない。」と思っている若者も多いと聞きます。
冒険心の少ない若者を見るのは、非常に残念な気がします。
最近は日本への観光客が激増しており、街中で外国人の姿を見るのはごく普通になっています。
では、彼ら全員が日本語を喋れるかと言うと、そうではありません。
多分ほとんどの観光客が、日本語を理解できないはずです。
日本人が英単語を知っているレベルの方が、彼らの日本語レベルよりもかなり高いと思います。
ですが、困った時には、彼らは何の物怖じもなく日本人に話しかけてきます。
もちろん、日本人には親切な人が多いというのもありますが、それでも何とか会話は成立することが多いです。
日本人は、基本的に心配性の人が多いと思います。
そして、何かをやる時には完璧に近い形で終わらせようとします。
言葉でもそうです。
無理に難しい文章を作ろうとしなくても、単語の組み合わせだけでも意外と意味は通じたりします。
また、今は便利なアプリや翻訳機も多いですし、片言でもいいので話しかける勇気を持てば海外でも何とか切り抜けられます。
海外に行かない理由としては、他にも「仕事が忙しすぎる」という方や、「海外に行く時間がないから」という方もいます。
確かに、日本人は全般的に仕事が忙しすぎますが、時間は作ろうと思えば作れるはずです。
やはり、日本人がパスポートを必要としない大きな理由の一つとしては、海外や海外旅行に対する興味心が薄れているからではないでしょうか?
また、「お金の余裕がないこと」もそうですが、心配性が多い日本人の「心の余裕のなさ」もあるように思います。
最近は、海外のどんな小さなニュースや出来事でも、日本から遠く離れている場所のことでも簡単にネット経由で手にはいります。
また、海外の様々な情報が、ツイッターなどのSNSを通してあっという間に世界を駆け巡ります。
知らないことが多いと興味心を掻き立てることがよくありますが、あまりにも簡単に外の情報が入ってくることで、外の世界への好奇心が削がれている可能性もあります。
世界で一番便利な日本のパスポート
実は、日本のパスポートは「世界最強」だと言われています。
イギリスのコンサルティング会社「ヘンリー・アンド・パートナーズ」が2019年に行った最新版の調査によると、日本は世界中の199の国と地域の間で、渡航できる国や地域の数が最も多い国となっています。
2019年度版では、日本国籍を有し日本のパスポートを持った国民が、ピザ無しで訪問できる国は「190ヶ国」という調査結果になっています。
これはどういうことかと言うと、日本のパスポートを持っているだけで、190ヶ国という多くの国から「短期の旅行ならビザはいらないから、いつでも来てね~」と信頼を得ているわけです。
日本国民として、誇りを持っていい調査結果だと思います。
急に海外に行く予定を決めても、殆どの国でビザの申請が必要ないわけですから、チケットとホテルさえ押さえれば渡航場所によっては今日の夜からでも海外に行けるのです。
(最近は、アメリカの「esta」や2021年から必要になるEUの「ETIAS(エティアス)」など、渡航認証の事前申請が必要になるので、出発するまで最低でも2~3週間必要になるケースもあります。)
勿論お金と時間は必要になりますが、せっかく世界で一番便利で使い勝手のいいパスポートを持てるのですから、機会があったら積極的に外の世界に飛び出してみましょう!
世界パスポート・ランキング2019年版
下記が、「世界パスポート・ランキング2019年版」の1位から100位までの国の情報です。
順位 | 国名 | ビザなし渡航可能国 |
---|---|---|
1 | 日本 | 190 |
2 | シンガポール | 189 |
2 | 韓国 | 189 |
3 | フランス | 188 |
3 | ドイツ | 188 |
4 | デンマーク | 187 |
4 | フィンランド | 187 |
4 | イタリア | 187 |
4 | スウェーデン | 187 |
5 | ルクセンブルク | 186 |
5 | スペイン | 186 |
6 | オーストリア | 185 |
6 | オランダ | 185 |
6 | ノルウェー | 185 |
6 | ポルトガル | 185 |
6 | スイス | 185 |
6 | イギリス | 185 |
6 | アメリカ | 185 |
7 | ベルギー | 184 |
7 | カナダ | 184 |
7 | ギリシャ | 184 |
7 | アイルランド | 184 |
8 | チェコ | 183 |
9 | マルタ | 182 |
10 | オーストラリア | 181 |
10 | アイスランド | 181 |
10 | ニュージーランド | 181 |
11 | ハンガリー | 180 |
11 | ラトビア | 180 |
11 | リトアニア | 180 |
11 | スロバキア | 180 |
11 | スロベニア | 180 |
12 | エストニア | 179 |
12 | マレーシア | 179 |
13 | リヒテンシュタイン | 178 |
14 | チリ | 175 |
15 | モナコ | 174 |
15 | ポーランド | 174 |
16 | キプロス | 173 |
17 | ブラジル | 171 |
18 | アルゼンチン | 170 |
19 | ブルガリア | 169 |
19 | 香港 | 169 |
19 | ルーマニア | 169 |
20 | アンドラ | 168 |
20 | クロアチア | 168 |
20 | サンマリノ | 168 |
21 | ブルネイ | 165 |
22 | アラブ首長国連邦 | 164 |
23 | イスラエル | 161 |
24 | バルバドス | 159 |
25 | メキシコ | 158 |
26 | バハマ | 154 |
26 | ウルグアイ | 154 |
27 | セーシェル | 151 |
27 | セントクリストファー・ネイビス | 151 |
28 | アンディグア・バーブーダ | 150 |
29 | コスタリカ | 149 |
29 | 台湾 | 149 |
30 | トリニダード・トバゴ | 148 |
30 | バチカン | 148 |
31 | モーリシャス | 145 |
31 | セントルシア | 145 |
32 | マカオ | 144 |
32 | セントビンセント・グレナディーン | 144 |
33 | グレナダ | 143 |
33 | パラグアイ | 143 |
34 | パナマ | 141 |
35 | ベネズエラ | 138 |
36 | ドミニカ国 | 137 |
36 | エルサルバドル | 137 |
36 | ホンジュラス | 137 |
36 | グアテマラ | 137 |
38 | ペルー | 134 |
39 | ソロモン諸島 | 130 |
40 | セルビア | 129 |
40 | バヌアツ | 129 |
41 | ニカラグア | 128 |
41 | サモア | 128 |
41 | ウクライナ | 128 |
42 | コロンビア | 127 |
42 | ツバル | 127 |
43 | マケドニア | 125 |
44 | マーシャル諸島 | 124 |
44 | トンガ | 124 |
45 | キリバス | 123 |
45 | モンテネグロ | 123 |
46 | モルドバ | 122 |
47 | ミクロネシア連邦 | 121 |
48 | ロシア | 119 |
49 | ボスニア・ヘルツェゴビナ | 118 |
49 | パラオ | 118 |
50 | アルバニア | 115 |
51 | ジョージア | 114 |
52 | トルコ | 111 |
53 | ベリーズ | 101 |
53 | 南アフリカ | 101 |
54 | 東ティモール | 97 |
55 | エクアドル | 93 |
56 | クウェート | 91 |
57 | フィジー | 89 |
58 | ガイアナ | 88 |
59 | モルディブ | 86 |
59 | ナウル | 86 |
60 | カタール | 85 |
61 | ジャマイカ | 83 |
61 | パプアニューギニア | 83 |
62 | ボツワナ | 82 |
63 | バーレーン | 81 |
64 | スリナム | 80 |
65 | ボリビア | 79 |
66 | ベラルーシ | 77 |
67 | カザフスタン | 76 |
67 | オマーン | 76 |
68 | ナミビア | 75 |
68 | タイ | 75 |
69 | 中国 | 74 |
69 | レソト | 74 |
70 | サウジアラビア | 73 |
71 | スワジランド | 72 |
72 | インドネシア | 71 |
72 | ケニア | 71 |
72 | マラウイ | 71 |
73 | ガンビア | 68 |
73 | タンザニア | 68 |
73 | ザンビア | 68 |
74 | アゼルバイジャン | 66 |
74 | フィリピン | 66 |
74 | チュニジア | 66 |
75 | カーボベルデ | 65 |
75 | キューバ | 65 |
75 | ドミニカ共和国 | 65 |
76 | キルギス | 64 |
76 | ウガンダ | 64 |
76 | ジンバブエ | 64 |
77 | ガーナ | 63 |
78 | シエラレオネ | 62 |
79 | アルメニア | 61 |
79 | ベナン | 61 |
79 | インド | 61 |
79 | モンゴル | 61 |
79 | モロッコ | 61 |
80 | モーリタニア | 58 |
80 | モザンビーク | 58 |
80 | サントメ・プリンシペ | 58 |
80 | タジキスタン | 58 |
80 | ウズベキスタン | 58 |
81 | ブルキナファソ | 57 |
82 | コートジボワール | 56 |
82 | ギニア | 56 |
82 | セネガル | 56 |
83 | ブータン | 55 |
83 | ガボン | 55 |
83 | マリ | 55 |
83 | トーゴ | 55 |
84 | カンボジア | 54 |
84 | ニジェール | 54 |
84 | ルワンダ | 54 |
85 | チャド | 53 |
85 | ギニアビサウ | 53 |
85 | マダガスカル | 53 |
85 | トルクメニスタン | 53 |
86 | コモロ | 52 |
86 | ラオス | 52 |
87 | 赤道ギニア | 51 |
87 | ハイチ | 51 |
87 | ベトナム | 51 |
88 | アルジェリア | 50 |
88 | ヨルダン | 50 |
89 | アンゴラ | 49 |
89 | 中央アフリカ | 49 |
89 | エジプト | 49 |
90 | カメルーン | 48 |
90 | ミャンマー | 48 |
91 | コンゴ共和国 | 47 |
91 | リベリア | 47 |
91 | ナイジェリア | 47 |
92 | ブルンジ | 46 |
93 | ジブチ | 45 |
94 | コソボ | 44 |
95 | コンゴ民主共和国 | 43 |
95 | スリランカ | 43 |
96 | エチオピア | 42 |
96 | イラン | 42 |
97 | 北朝鮮 | 41 |
97 | バングラディシュ | 41 |
97 | レバノン | 41 |
97 | リビア | 41 |
97 | 南スーダン | 41 |
98 | ネパール | 40 |
99 | パレスチナ | 39 |
99 | スーダン | 39 |
100 | エリトリア | 38 |
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